秒の再定義をテーマとしたシンポジウムを産総研と共同開催

2025.9.2

当研究所電磁波標準研究センター時空標準研究室は、2025年8月25日に「時間・周波数標準シンポジウム 新しい「秒」へ ~定義改定に向けた最新動向と正確な1秒が支える社会基盤のご紹介~」を、東京お台場の産業技術総合研究所(以下「産総研」)臨海副都心センターで産総研計量標準総合センターと共同で開催した。

シンポジウムに先立って両機関共同でメディアセミナーを行い、メディアからは19名の参加があり、秒の定義のこれまでの変遷等を産総研の安田正美時間標準グループ長が説明した後、国際度量衡委員会時間周波数委員会での秒の再定義に向けた議論の動向を井戸時空標準研究室長が解説した。

続いて、メディアからの参加を含め105名の参加者を得てシンポジウムが開催された。中川電磁波研究所長による開会挨拶の後、前半では、現在2030年が想定されている秒の再定義について3つの講演がなされ、理化学研究所の香取秀俊教授による光格子時計開発についての講演の後、国際度量衡委員会事務総長でもある産総研の臼田孝総合センター長が計量標準の基本的な考え方や2019年の質量標準の改訂の過程を講演し、続いて井戸室長が現在の時間周波数諮問委員会(CCTF)での秒の再定義に向けた議論の内容を紹介した。井戸室長は秒の再定義を行うために必要な条件の充足具合を検討する作業部会の共同議長も務めている。

後半は、原子時計が社会でどのように利用されているかを紹介するセッションとして、JAXAの小暮聡統括より準天頂衛星システムの現状を、国土地理院の宮原伐折羅センター長からはGNSS測位がVLBI等の測地技術によって決定される座標系によって維持されていることが解説され、最後に国立天文台水沢VLBI観測所長である本間希樹教授より原子時計によって実現するVLBI技術によって得られたブラックホールの画像観測等が報告された。

中川電磁波研究所長による開会挨拶

中川電磁波研究所長による開会挨拶

井戸時空標準研究室長による講演

井戸時空標準研究室長による講演

プログラム(敬称略)

【第1部】
「秒の定義改定に向けて」
  • 光格子時計の小型可搬化から社会実装へ
    香取 秀俊(東京大学/理化学研究所)
  • 単位の進化とメートル条約 -科学が進むと単位が変わる-
    臼田 孝(産業技術総合研究所)
  • CCTFでの議論に見る秒の再定義の現状と課題
    井戸 哲也(情報通信研究機構)
【第2部】
「原子時計が支える科学や社会インフラとその持続性」
  • 準天頂衛星システムと原子時計、現状と将来シナリオ
    小暮 聡(宇宙航空研究開発機構)
  • 互いに支え合う位置と時間 -地球規模の測地サプライチェーンと時計-
    宮原 伐折羅(国土地理院)
  • VLBIによる観測天文学と高精度周波数標準
    本間 希樹(国立天文台)