EarthCARE衛星(はくりゅう)打ち上げ成功

2024.5.29

日欧が協力して開発を進めてきた雲エアロゾル放射ミッション(EarthCARE: Earth Clouds, Aerosols and Radiation Explorer)の衛星・はくりゅうが日本標準時5月29日7時20分(米国太平洋夏時間5月28日15時20分、中央ヨーロッパ夏時間5月29日00時20分)に米国カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地からスペースX社のファルコン9ロケットによって打ち上げられた。衛星は打ち上げ約10分後にロケットから切り離され、日本時間8時14分に南アフリカのHartebeesthoek地上局にて、衛星が地球周回軌道上に投入されたことを示すテレメトリが受信された。

EarthCARE衛星に搭載されている4つのセンサーの内の一つ、雲プロファイリングレーダー(CPR: Cloud Profiling Radar)はJAXAとNICTが共同開発したレーダーで、衛星からの世界初となるドップラー観測機能を有している。打ち上げから約27時間後の日本時間5月30日10時14分にCPRの主反射鏡が正常に展開したことが確認された。

今回の打ち上げに際し、米国ヴァンデンバーグの射場ではNICT、ESA、JAXAをはじめ、Airbus関係者など約40名の参加者が打ち上げを見守った。打ち上げのライブ映像は衛星の管制を行うドイツの欧州宇宙運用センター(ESOC: European Space Operations Centre)と日本のJAXA東京事務所(御茶ノ水)にも生中継され、それぞれの拠点でYouTubeライブ配信などイベントが行われた。

ドイツESOCでは、NICT、ESA、JAXA、Airbusをはじめ約350人の関係者が集まり、打ち上げ前の記者説明会のほか、ESA Web TV(YouTubeライブ配信)など各種イベントが行われた。20年を超える開発を経ての打ち上げに、かつて開発に関わっていたOBなども参加し、会場はさながら同窓会のようでもあり、熱気を帯びていた。ESA Web TVでは関係者が様々なエピソード紹介や解説を行う中、当研究所電磁波伝搬研究センターリモートセンシング研究室の川村室長がCPRの主反射鏡開発に関する話題を紹介した。JAXA東京事務所のライブ配信では、同研究室の大野嘱託職員がロケット工学アイドルVtuberの宇推くりあさんらとともに打ち上げライブ映像の解説を行った。

EarthCARE衛星は、温暖化など地球環境変動メカニズムの解明、気候モデルの検証・改良、気象や大気環境の予測改善などへの貢献が期待されている。今後、NICTではCPRの校正を担当する他、JAXAと協力してアルゴリズム開発・評価およびプロダクトの検証を行う計画である。

【リンク】

Falcon 9ロケットの打ち上げの瞬間

Falcon 9ロケットの打ち上げの瞬間(ESA配信映像より)

ロケット第一段切り離しの瞬間

ロケット第一段切り離しの瞬間(衛星側からの画像・ESA配信映像より)

打ち上げ約10分後。ロケット第二段切り離し(衛星放出)の瞬間

打ち上げ約10分後。ロケット第二段切り離し(衛星放出)の瞬間(ロケット側からの画像・ESA配信映像より)

ドイツESOC会場にてESA Web TVに登壇する川村室長

ドイツESOC会場にてESA Web TVに登壇するNICT川村室長(ESA配信映像より)

ドイツESOC会場にてテレメトリ受信までを確認し、ESA Web TV配信後に喜ぶEarthCARE関係者

ドイツESOC会場にてテレメトリ受信までを確認し、ESA Web TV配信後に喜ぶEarthCARE関係者

JAXAの打ち上げライブ配信終了後、打ち上げ成功を喜ぶ関係者

JAXA東京事務所にて打ち上げ解説を行ったNICT大野嘱託職員(左)とJAXA吉田研究開発員。画面右端がVtuberの宇推くりあさん