「第27回震災対策技術展」に出展
2023.2.2~3
2023年2月2日(木)・3日(金)、パシフィコ横浜で開催された「第27回震災対策技術展」に、電磁波研究所、ネットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センター、同レジリエントICT研究センターの合同で出展した。本技術展は、災害時の被害軽減のための技術・製品の普及を目的として平成9年より開催され、NICTは平成19年から毎年出展して研究成果の広報に努めている。今回も防災・減災関連の企業をはじめ、国や自治体、研究機関、大学など、全体で151の組織が出展した。来場者は2日間で10,023名であった。
電磁波研究所では、リモートセンシング研究室が世界最高分解能15cmの性能を有する航空機搭載合成開口レーダー「Pi-SAR X3」による地表面観測の実例とその利活用事例を紹介した。火山(富士山・草津白根山・焼岳・浅間山)の多偏波観測から作成した疑似カラー画像をポスターと大型ディスプレイを用いて展示し、タッチパネルで高精細画像を自在に拡大表示ができる大型画像表示システム「SCALE」(電磁波研究所が開発)を用いて、SARの観測範囲の広さ・分解能の高さ・性質などを来場者に体感していただいた。
ワイヤレスネットワーク研究センターでは、宇宙通信システム研究室が「災害時に役立つ衛星通信システム」をテーマに「次世代ハイスループット衛星通信システムの研究開発と技術試験衛星9号機(ETS-9)による実証に向けた取組」、「災害時に役立つ次世代ハイスループット衛星通信システム」および「ETS-9用小型車載局アンテナ」を動態展示した。ETS-9展示では災害時などに変動するトラフィックに対応する周波数フレキシビリティやエリアフレキシビリティ機能を中心に説明を行った。災害時衛星通信では、小型移動体車載局アンテナの動作や移動体からの通信が災害対応に役立つことを説明した。
レジリエントICT研究センターでは、「世界をレジリエントにするICT」と題して、①災害等の非常時においても通信・放送を確保して地域の情報通信インフラを強靭にする災害に強いネットワーク「NerveNet(ナーブネット)」の概要と、和歌山県白浜町における実装事例の紹介。②SIP第2期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」の「避難・緊急活動支援統合システムの研究開発」での成果である通信途絶領域解消技術を活用して情報共有を実現する当機構提唱システム「ダイハードネットワーク®」の紹介と、その応用事例としてポータブルSIP4D(第6期科学技術基本計画に掲載のSIP4Dの通信途絶対策版)の実機展示、及び自治体の導入事例として高知県香南市や高知市消防局に導入されたシステムの概要の紹介。③同じくSIP第2期の成果であるAIを備えた防災チャットボットSOCDAが、人間の代わりに大勢の被災者と自動的にLINEで対話し、被災情報収集・分析や避難支援を行うシステムと、伊丹市や神戸市などの防災訓練の事例の紹介。④映像IoT技術を用いた高品質映像伝送による自然環境計測に関する展示、および霧島硫黄山の噴気孔のリアルタイム映像や宮城県加美農業高校等における導入事例などの紹介。計4つの研究テーマについて展示を行った。
この展示会への来場者は、自治体、陸上自衛隊、企業(電機メーカー、IoTサービス、防災サービス)等であり、NerveNetの導入費用やメンテナンスなどの導入検討にむけた情報収集、ダイハードネットワーク®の製品化、レジリエント自然環境計測プロジェクトの「魚の目カメラ」の可搬性と高品質かつ低遅延な映像伝送技術への関心が高かった。
ブースの一画にはNICT全体および出展研究所を紹介するとともに、2022年1月のトンガ海底火山噴火を事例に、火山噴火、地震、津波などの自然現象による大気波動の観測と、GPS衛星を利用した電離圏の観測の両面について、レジリエントICT研究センターと電磁波研究所宇宙環境研究室の共同でポスター作成し、トピックとして掲げて紹介した。
【NICTの出展内容】
- Pi-SAR X3の世界最高分解能15cmが拓く新たな地表面観測(電磁波研究所)
- 災害時に役立つ衛星通信システム(ワイヤレスネットワーク研究センター)
- 世界をレジリエントにするICT(レジリエントICT研究センター)
- 1. NerveNet(ナーブネット)~地域の情報インフラを強靭に~
- 2. ダイハードネットワーク® ~レジリエントな情報通信基盤を目指して~
- 3. 防災チャットボットSOCDA(ソクダ)を用いた災害時の被災者対応支援
- 4. レジリエント自然環境計測プロジェクト
【リンク】