第16回 NICT/EMC-net シンポジウムを開催
2022.9.29
当研究所の電磁波標準研究センター電磁環境研究室では、電磁的両立性(EMC)研究者・技術者の情報・意見の交換を目的としたオープンフォーラム「NICT/EMC-net」を2006年に立ち上げ、オープンイノベーションに向けた活動を継続している。現在の会員数は延べ758名である。本フォーラムでは年に一度の定例シンポジウムを開催しており、今年度は2022年9月29日(木)に「第16回 NICT/EMC-netシンポジウム」をオンラインで開催した。当日は電気電子機器や測定装置等のメーカー、試験機関、大学などから、接続数111(関係者31を含む)の参加をいただいた。
今回は「EMC分野における深層学習の期待と可能性」をテーマとした。まず、京都大学大学院情報学研究科の田中教授から、深層学習の研究動向に関する基調講演をいただいた。続いて、(株)システムデザイン研究所顧問の櫻井様から前職の日本IBM時代からのEMC設計への数値シミュレーション技術と機械学習応用についての取り組みを報告いただいた。また、(株)東陽テクニカの李様よりEMI測定・設計対策におけるAI応用に関する商用ソフトウェアの開発について報告いただいた。続いて、総合討論の時間を設け、電磁環境研究室の渡辺室長からEMC分野におけるNICTのAI研究動向としてメタマテリアル電波散乱シートの設計最適化や電波ばく露レベルモニタリングへのAI応用についての研究成果を紹介し、その後に電磁環境研究室が取り組んでいる中立公正な立場での許容値や適合性確認方法の根拠となるデータ取得や標準化におけるAI技術の応用の可能性について講演者と議論を行った。
講演や総合討論では、深層学習の汎化能力をめぐるパラドックスや暗黙の正規化といった情報科学分野における深層学習の最新の議論が紹介され、現時点では「”よくあたる占い”という位置づけの深層学習をどう使いこなすか」といった議論が展開された。とくにEMC分野においては、原因推定やシミュレーションの高速化などの分野での応用が期待される一方で、規制や規格の根拠として利用することについては注意が必要であるとの議論が行われ、EMC分野における深層学習の活用の在り方を考える貴重な機会となった。
第2部では昨年度におけるNICT/EMC-netのEMC測定法研究会、EMC校正法研究会、人体の電波ばく露評価研究会、将来課題研究会の活動報告が行われた。
【リンク】
プログラム(敬称略)
【第1部】 EMC分野における深層学習の期待と可能性 |
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【第2部】 NICT/EMC-net 活動報告 |
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