協定世界時の歩度校正における光時計の優位性を実証

2021.12.21

協定世界時(UTC)の歩度(1秒の間隔)は、高精度な周波数標準器で測定され、秒の定義に基づくように維持されている。これまでは秒の定義を実現する「セシウム一次周波数標準器」がこの役割を果たしてきたが、近年、より高精度な光格子時計やイオン時計がこれに代わることが期待されつつある。秒の再定義に向けた議論においてもこの点の重要性は認識されており、再定義のための必須条件のひとつは、「ひと月当たり少なくとも3台の光時計が、不確かさ2×10-16以下で定期的にUTCの歩度校正に貢献すること」となっている。

NICTのストロンチウム光格子時計(NICT-Sr1)は、2018年11月にフランスのパリ天文台(SYRTE)に続いて世界2例目となる二次周波数標準器の認定を受けて以来、2021年の初夏まで、光時計として実質唯一、UTCを遅延なく校正してきた。また、その間には米国NIST、イタリアINRIM、産総研、韓国KRISSが有するそれぞれの光格子時計がこれに続いて二次周波数標準器の認定を受けた。

NICTでは、産総研とKRISSが認定を受けた後、当該機関と共に積極的に協定世界時の無遅延校正に貢献している。2021年11月には初めて3機関の光周波数標準器が同時に半月以上にわたり協定世界時の歩度校正に貢献した。この結果はUTCをより堅牢に維持することにつながるだけでなく、秒の再定義に向けた大きな一歩である。この成果は2021年12月21日に国際度量衡局(BIPM)により記事としてまとめられ、NICT-Sr1の写真とともに、BIPMのWebサイトに掲載された。

さらにNICTでは、平均化時間を通常よりも長い40日間(2021年11月中旬から12月末)として歩度評価を試みた。その結果、NICT-Sr1は他の一次及び二次周波数標準器を含めて、これまでで最も小さい不確かさ1.9×10-16で協定世界時の歩度を評価でき、NICTが開発してきた協定世界時を校正する方法の優位性を世界に示した。本成果は、光時計によるUTCの歩度評価が現行の精度を上回ることを実証したものである。

当研究所の電磁波標準研究センター時空標準研究室では、今後も光時計のUTCへの貢献において世界を牽引し、UTCの維持および高精度化に努めるとともに、秒の再定義実現において重要な役割を果たしていく。

【リンク】