藤沢市所蔵フレスコ画の科学調査と一般公開を実施

2020.12.5~12

当研究所の電磁波応用総合研究室は、これまでに培ったTHz波時間領域イメージング法による文化財の非破壊調査技術等を用いて、藤沢市所蔵の長谷川路可作のフレスコ画「イタリアの想い出」の調査を、2020年12月5日~12日に藤沢市アートスペースのワークショップルームにおいて実施した。

この作品は、壁画として描かれたフレスコ画をストラッポという技法で壁面より剥がし、新しい支持体となる布に貼り付けられている。絵画表面は欠損部分も多く、電磁波を用いた層構造の調査をすることは、将来的な修復に役立つ。ストラッポ技法の作品をTHz波で測定した例は世界でまだ無く、その有効性を検証し応用範囲を広げる上で有益と考え、調査研究として藤沢市に提案し実施することとなった。

藤沢市側より実験の一般公開を提案され、操作には支障が無いことから、これまでの成果の紹介も兼ねて公開調査とした。一般公開の案内は藤沢市から報道発表され、NICTからもアナウンスした。

公開日の12月9日・10日には、フレスコ画関係者の他、一般の美術愛好家など多数が来訪された。この様子は、神奈川県全域・東京多摩地域の情報紙「タウンニュース」にも掲載された。

この測定の結果、絵画の裏面に下地の石灰が付いたままの部分や、支持体となっている布を継いである部分などの層構造が明らかになった。今後、得られたデータを解析し論文化するとともに、修復計画の立案に役立つ記録書を作成する予定である。

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