中川所長が「日本気象学会2023年度岸保・立平賞」を受賞
2023.5.20
当研究所の中川勝広所長が、日本気象学会2023年度岸保・立平賞を受賞し、2023年5月20日に東京大学・安田講堂にてその授賞式と受賞記念講演が開催された。岸保・立平賞は、気象学及び気象技術の学術的あるいは技術的成果をもって社会に多大なる貢献をなしたものに対する顕彰で、今回中川所長は、気象庁気象研究所の山内洋氏とともに、Cバンド固体素子二重偏波気象レーダーの社会実装への貢献が認められ、同賞を共同受賞した。
Cバンド固体素子二重偏波気象レーダーは、降水粒子の種別(雨・雪・雹・霰など)判別や降水強度の正確な推定といった二重偏波観測に係る先行開発の成果を活かしつつ、固体素子(半導体)送信機の導入により、長寿命化や、利用する電波の狭帯域化(電波資源の有効活用)を実現するなど気象観測技術に革新をもたらした。屋外無線LAN等と競合するCバンドの周波数帯域において、より細かく周波数を割り当てられるようになるなど電波行政の推進にも貢献した。これらを受けて、近年、Cバンド固体素子二重偏波気象レーダーの導入が、気象庁、国土交通省河川局等で進められている。気象庁では、全国9機の空港気象ドップラーレーダーのうち8機、一般気象レーダー20機のうち10機にすでに導入されている。また、国土交通省では、高性能レーダー雨量計ネットワークXRAINを構成する20機のCバンド気象レーダーのうち19機が固体素子二重偏波化されている。
中川所長は、2002年に沖縄亜熱帯計測技術センター(現沖縄電磁波技術センター)において、現在主流となっている同時発射・受信型の二重偏波気象レーダーとしては日本初となる沖縄偏波降雨レーダー(COBRA:CRL Okinawa Bistatic Polarimetric Radar)を開発し、現業用Cバンド気象レーダーと同等の感度を持って台風の降雨域を観測し、実用的な二重偏波観測が可能であることを示した。更にこのレーダーで、現在の気象庁の固体素子二重偏波気象レーダーに不可欠なパルス圧縮技術と、二重偏波の高精度な校正手法を考案・実証した。同レーダーの現業化に尽力した山内氏とともに、Cバンド固体素子二重偏波気象レーダーの社会実装への貢献が高く評価され、今回の受賞につながった。
【リンク】